(5)産業の被害
川崎製鉄・神戸製鋼などの鉄鋼業、川崎重工・三菱重工などの造船業はいずれもその本社などの中枢建物が倒壊したり、工場も生産設備に大きな被害があり生産ラインがストップした。
住友ゴム本社工場では煙突が倒壊し、操業が不可能になったが、生産設備の被害は軽微で、設備を市外の他工場に移して生産を継続した。バンドー化学、三ツ星ベルトなども被災したが、生産拠点を他地方に移すなどして生産の停滞を防いだ。
ケミカルシューズについては、長田区・須磨区を中心に発展してきたが、震災後の火災の発生で大きな損害を受けた。メーカーや下請け企業を含めて長田区南部のほぼ2平方キロメートルの地域に約1,600社が集中し、さらに可燃性の高い原材料が保管されていたことから、ケミカルシューズ産業の約80パーセントが、全半壊または全半焼の被害にあった。
清酒業は神戸市東部の臨海部を中心に江戸時代中期以来発展してきたが、灘五郷酒造組合に加盟している50社すべてが、製造工場、瓶詰め工場、倉庫、資料館などに被害を受けた。
貿易業は第48回(平成7年)「貿易実態調査」によれば、214社のうち、被害がまったくなかったのは2社にすぎず、社屋等の損傷等の直接的な被害に加えて、港湾被害や商品輸送の停滞などによる間接被害を受けた。
小売業では、市内商店街店舗の33.2パーセント、小売市場店舗の45.4パーセントが全壊・全焼の被害にあっている。百貨店では、そごう神戸店(現在の神戸阪急)の本館部分、大丸神戸店の一部建物が損壊した。スーパーマーケットではダイエーの市内26店舗中12店が営業不能となり、その他のスーパーマーケットも大きな被害を受けた。コープこうべでは、本部ビルが倒壊、12施設が全壊、6施設が半壊するなど被害が大きかった。
この震災が経済基盤に与えた直接・間接の被害は膨大なものになり、その後の神戸経済に大きな影響を与えた。
全国からのボランティアや支援を受けながら懸命の復旧作業が続いたが、市民生活をはじめ産業面、環境面など影響を与えた範囲はあまりに広く甚大であった。兵庫県下の直接被害総額は9兆9,268億円という想像を絶する規模とされた。