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最終更新日:2023年12月5日
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2022年9月16日(金曜)から10月8日(土曜)まで実施した「アーバニスト・イン・レジデンス in Nagata」事業のアーカイブを掲載しています。
シリイケバレー(長田区東尻池町4丁目11-8)
主な滞在場所は、旧尻池市場の中にある元魚屋さんを改修した物件「シリイケバレー」。for Citiesが事前視察した際、いくつか見た中でも「心を掴まれた」廃屋建築集団・西村組による廃屋活用の物件の1つです。2階建ての長屋で、1階部分はまちに開かれた場所として期間中さまざまな人が出入りできるようになっていました。
長田区での3週間の滞在中は、アーバニストたちが実際にまちのフィールドに入り込みながら、既に存在している実践者へのインタビューや、参与観察、独自リサーチに加え、滞在場所へのポップアップスタジオを制作し、長田への理解を深めていきました。ここにいくつかのリサーチ手法をご紹介します。
長田区で活動をされている実践者数名へのインタビューを収録し、for Citiesが運営しているPodcast番組「Good News for Cities」にて全国のリスナーに向けて発信しました。
配信URL|https://anchor.fm/good-news-for-cities(外部リンク)
<インタビューを受けた皆さん>
・合同会社廃屋、西村組親方 西村周治さん
・建築集団西村組 上野天陽さん
・(株)Happy代表取締役、カオスクリエイター 首藤義敬さん
・FMわぃわぃ 金千秋さん
・ダンサー、振付師 アラン・シナンジャさん
・NPO法人DANCE BOX 横堀ふみさん
・長田区まちづくり課
参与観察とは、リサーチの対象となる場所やコミュニティ、そしてそれを取り巻く環境や文化において、どのような振る舞いやコミュニケーションが発生しているのか、その場所に滞在し生活に身を委ね参加することにより把握する手法です。
今回の滞在でアーバニストたちは、地域の集まりや活動に積極的に参加し、地域のリズムや文脈を理解することに努めました。長田区民の活動場所や生活の場を訪ね、食事の場を囲み、対話をすることで、会議室に被験者を呼び出し質問するだけでは得られない、日常生活での振る舞いや言動をすくい上げることができました。
長田のまち中で、「羨ましい」「活用したい」と感じた瞬間や場所・現象を、フレームで切り取り、「羨ましい」と思った理由と共に写真に収め、アーカイブ化する実験です。「よそ者から見た長田の羨ましいスポット」として、次に訪れるアーバニストたちの布石にすることを目的としています。
手順|
手作りのフレームを片手に、長田のまちを歩く。よそ者のフレッシュな視点で、特別だと思うもの、素敵だなと思う瞬間・場所・現象をフレームで切り取り、その様子を写真に収める。その時考えたことは、必ずメモにとっておく。人によって異なる視点を共有する。
ルール|
「羨ましい」と思うものは、場所に限らなくとも良い。瞬間や現象、人間関係など、目に見えないものでも良い。観察者としての主観を持ち込み、あくまでも「個人」の視点をハイライトする。
参加者|
for Cities、インターン、女子高生、地域住民、外部から招致されたアーバニスト
滞在場所であるシリイケバレー内に期間限定のポップアップスタジオを設けました。ここでは、インタビューやフィールドワーク中に集めた写真やメモ、考察などを模造紙やポストイットを活用して壁に貼り出したほか、ドイツ出身のアーティスト/研究者による展示も行うなど、誰もが自由に閲覧できる場所となりました。リサーチの過程や結果を、荒削りのまま現在進行形で公開することで、訪問者からのフィードバックを得たり、対話を生み出すきっかけをつくったりすることができました。
リサーチを通して学んだことを広く共有するとともに、3週間の滞在中に出会った人たちが交流し、共に学ぶための機会を設けました。
滞在期間中、滞在拠点となったシリイケバレーでの生活の様子を公開し、より多くの人々とリサーチの内容を共有して交流することを目的にオープンスタジオを3回開催しました。大阪や京都から、遠くは愛知や東京からも、のべ130名ほどの来訪がありました。集まった方々も、建築・まちづくり関係者、研究者、アーティスト・クリエイターから、ご近所の方々、地元の高校生まで、恐らくこの機会が無ければ交わらなかったであろう方々が一同に会する場となりました。
親子連れで訪れた方からは「子どもが『長田に住みたい』と言い始めた」とのお声をいただいたり、オープンスタジオ訪問をきっかけに長田が気に入り、頻繁に取材に訪れるようになったメディア関係者の方もおられました。
長田という都市への理解を深めたり、訪問者同士の交流を促進する目的で、招致アーバニストによるワークショップもいくつか開催されました。
招致アーバニストの1人、William Zack Wood氏による手作りのモンスターカードでタロット占いをするイベントを行いました。シリイケバレーの独特な構造を活かしたダンスパフォーマンスも行われ、場所の活用方法の好事例を生み出していました。また、この日は、あらゆる公共空間を自宅のように使ってみる活動をしている「流しのこたつ」もシリイケバレーに来てくれました。(参加者24名)
アーティストのJuliette Pénélope Pépin氏による、オリジナルの「長田ガエル」作りのワークショップを行いました。アーティストが事前リサーチを踏まえて特別に制作した型や、長田で揃えた材料を使いながら、参加者ごとに個性あふれるカエルたちが完成しました。(参加者15名)
滞在したアーバニストと、長田区まちづくり課の職員による滞在リサーチの報告会を新長田合同庁舎1階・兵庫県立神戸生活創造センターにて実施しました。滞在期間中に様々な形でアーバニストと関わった区民・市民の皆さんが集まり、アーバニストたちとの別れを惜しみつつ、長田のこれからに思いを馳せました。
およそ50名の参加者の方からは、「通学しているだけでは感じられなかった長田の魅力を知れた」「自分自身がまちでどう活動するか、ヒントになった」「まずは自分から街の輪に飛び込んでいこうと思った」などの感想をいただきました。
長田にとって鍵となるような、約40ヶ所のスポットに訪問しました。
(r3、はっぴーの家ろっけん、バラックリン、アンダーザブリッジ、大日温泉、新長田図書館、丸五市場、六間道商店街、本町筋商店街、WAGOMUクライミングジム、新湊川公園、真野地区まちづくり会館、ArtTheater dB Kobe、たかとり教会、多文化共生ガーデン、下町芸術大学、スタヂオ・カタリスト、こと・デザイン、サカヅキ、防災空地、ジョブスペースラボ、名倉市場、菊水温泉、萬歳湯、獅子ヶ池、富士、アイドル、Citygallery2320、角野邸、おさんぽ畑、ふたば学舎、鉄人広場、おでんハウス、清涼山地蔵院 等)
一般社団法人for Cities
東京・京都に活動拠点を持つ都市体験のデザインスタジオ。国内外の、建築やまちづくり分野でのリサーチや企画・編集、展示会の開催、教育プログラムの開発まで、国や分野を超えて「都市」の日常を豊かにすることを目指して活動している。都市を面白くする方法=アーバニズムのアイデアを収集するプラットフォーム「forcities.org」を運営しており、国内外のアーバニストたちとのネットワークを築き上げている。これまでに、アーバニストに必要なスキルを学ぶ学校「Urbanist School」や都市の祭典「for Cities Week」を東京・ナイロビ・カイロで実施。若手の人材育成や、これからの持続可能な都市づくりの提案を地域に入り込みながら実践している。
Website:https://www.forcities.org/(外部リンク)
SNS:@for_cities
杉田真理子
都市・建築・まちづくり分野における執筆や編集、リサーチほか、文化芸術分野でのキュレーションや新規プログラムのプロデュース、ディレクション、ファシリテーションなど、幅広く表現活動を行う。都市に関する世界の事例をキュレーション ・アーカイブするバイリンガルWebメディア「Traveling Circus of Urbanism」、アーバニスト・イン・レジデンス「Bridge To」を運営。
Website: travelingcircusofurbanism.com
SNS: https://linktr.ee/MarikoSugita
石川由佳子
アーバン・エクスペリエンス・デザイナー。(株)ベネッセコーポレーション、(株)ロフトワークを経て独立。「自分たちの手で、都市を使いこなす」ことをモットーに、さまざまな人生背景を持った人たちと共に市民参加型の都市介入活動を行う。体験をつくることを中心に「場」のデザインプロジェクトを国内外で手がける。学びの場づくりをテーマに、「Ted×Kids」や「True Colors Academy」など、さまざまなアートプロジェクトにも携わる。
Website: na-tokyo.com
SNS: https://linktr.ee/YukakoIshikawa
for Citiesの2人以外にも、国内外のアーバニストが選定され、長田に一部期間滞在しました。異なる視点やスキルセットにより、多角的に長田のまちを再編集できるメンバーが選定されました。
Juliette Pénélope Pépin
ICA京都アーティスト・リサーチャー。最近の展覧会として、Brighton CCA Dorset Place(イギリス)でのグループ展”Hydrographism”、Espace Voltaire(フランス)でのUniversity Pluralityとのグループ展”When, Suddenly”、ブラインドサイドギャラリー(オーストラリア)での”working conditions”など。インスタレーション、動画、版画、思弁的な物語を通して、人間と人間以外の知覚的つながりを探る。
Harry Lee
香港出身、京都在住のランドスケープ・アーキテクト、茶人。セラミックアーティストとしても活動を行う。ニューヨークにて、ハーバード・ティークラブを設立。お茶と陶芸、ランドスケープを行き来しながら表現活動を行う。
大谷 省悟(株式会社301 プロデューサー、代表取締役)
広告業界にてグラフィックの制作に携わった後、プランナー/プロデューサーとして独立。2014年に株式会社301を設立し、ビジネスと文化の交差点におけるブランド開発やリブランディングプロジェクトを多数主導。2019年、LIFEとWORKが融合した世界観を発信する拠点として代々木上原に「No.」を立ち上げる。
William Zack Wood
京都精華大学芸術研究科博士後期課程。2014年からヨーロッパにて、ゲームデザイン・シアターゲーム指導・パフォーマンスを行う。その後、自作のゲームやマンガのキャラクターを元に、2020年からオリジナルのオラクルカードを作っている。
合同会社廃屋(西村組)
NPO法人DANCE BOX
阪下滉成(Pepe)
白濱翔太
眞野麗愛
渡邊桃子